システムを取り巻く環境は、デジタル技術の進化やビジネスモデルの変革とともに、日々めまぐるしく変化しています。ここでは適応保守がシステム運用においてどのような役割を持っているのか、基本から分かりやすく解説していきます。
適応保守(Adaptive Maintenance)とは、システムの稼働環境や外部の条件が変わった際、それに合わせて正常に動作し続けるようプログラムの調整や改修を行う保守活動を指します。
導入当初は完璧に動いていたシステムでも、時間が経てばOSの進化、クラウド環境の変化、法律の改正など、周囲の状況は必ず変わっていくものです。
家づくりに例えるなら、家族の成長や新しい建築基準法に合わせて、住みやすいようにリフォームを繰り返すようなものだと言えるでしょう。
これらの変化に取り残されないよう、システムを現在の環境に「適応」させることが大きな目的となります。
結果として、突然のエラーによる業務停止を防ぎ、ビジネスを安定して継続する基盤を守る重要な役割を果たしているのです。
実際にどのようなタイミングで適応保守が求められるのでしょうか。企業の現場でよく発生する、代表的な具体例を3つ挙げて詳しく見ていきましょう。
WindowsなどのOSや、データベースソフトといったミドルウェアは、セキュリティ向上や機能追加のために定期的なアップデートが行われます。
土台となるソフトウェア環境が新しくなると、その上で動いている業務システムに予期せぬ不具合が生じるかもしれません。
たとえば「古いOSでは動いていた画面が、新しいOSにしたら表示崩れを起こした」といったケースです。新しいバージョンでもこれまで通り問題なく動作するかを確認し、必要に応じてプログラムのコードを修正する作業が発生します。
社会的なルールの変更も、社内システムに直接的な影響を与える大きな要因となります。最近の例で言えば、インボイス制度(適格請求書等保存方式)や電子帳簿保存法の導入、過去には消費税率の変更などが挙げられるでしょう。
法律や税制が変わった場合、請求書の発行システムや会計ソフトを新しいルールに準拠するように改修しなければなりません。
もし対応を怠れば、法令違反となって企業としての信用を失うリスクが生じます。
現代のシステムは単独で動くことは少なく、決済サービスや外部のクラウドツールなどと連携(API連携)して動くケースがほとんどを占めるようになりました。もし連携先のサービスが仕様を変更した場合、これまでの接続方式ではデータのやり取りができなくなってしまう危険性があります。
「顧客がクレジットカード決済を行えなくなった」「連携先のシステムにログインできない」といったトラブルを防ぐため、相手側のアップデートに合わせて自社のシステム側も通信方法を更新する作業が求められるのです。
システム保守には、適応保守以外にもいくつかの種類が存在しているのです。それぞれ対処する目的やトラブルへのアプローチ方法が異なるため、各保守の役割を正しく理解しておく姿勢が大切といえるでしょう。
代表的な3つの保守を取り上げ、適応保守との違いを明確にしていきます。
是正保守とは、システム運用中に発生した不具合やエラーを修正し、正常な状態に戻すための作業を指します。「バグ対応」と呼ばれるもので、トラブルが起きてから事後的に急いで対処する特徴を持った保守活動です。
一方で適応保守は、システム自体に目立った不具合がなくても、外部環境の変化に合わせて事前に手を入れる点に大きな違いがあると言えるでしょう。
将来起こりうる障害を未然に防ぐ目的で行われるのが、予防保守というアプローチです。例としては、サーバーのハードディスク(HDD)などの消耗品を定期的に交換したり、エラーの兆候がないかログを監視したり、潜在的なバグを先回りして直したりします。
「外部環境の変化に合わせる」適応保守に対し、予防保守は「システム内部の物理的な劣化や隠れたリスクに対処する」という視点の違いが存在するのです。
完全化保守(改善保守)は、システムの処理速度を上げたり、ユーザーの使い勝手(UI/UX)を良くしたりするための機能追加・改修を意味します。現状でも問題なく動いているシステムに対し、「さらに快適にする」「より高い価値を生み出す」ために行う前向きな投資です。
適応保守が「今の水準を維持して使い続ける」ための守りの対応であるのに対し、完全化保守はシステムを成長させる「攻めの対応」という側面を持っています。
適応保守は、「現状トラブルなく稼働しているシステム」にあえて手を入れるデリケートな作業です。そのため、実施にあたっては特有の難しさや、気をつけるべきポイントがいくつか存在します。
失敗を防ぎ、スムーズに保守プロジェクトを進めるための注意点を見ていきましょう。
一部のプログラムを新しい環境に合わせて書き換えた結果、関係のない他の機能まで動かなくなる現象(デグレ:デグレーション)が起こる危険性があります。
どこを修正すればどの機能に影響が及ぶのか、事前に影響範囲を正確に分析しなければなりません。
本番環境へ適用して業務を止めてしまう事態を防ぐため、元の機能が壊れていないかを確認する入念なテスト計画を立てて、動作確認を徹底するプロセスが不可欠です。
法律の改正や外部APIの仕様変更などは、自社の都合とは無関係に突発的なタイミングで発生するものです。対応が遅れれば業務に大きな支障をきたすため、変化をいち早く検知する体制づくりが求められます。
日頃から関連省庁の発表や連携先ベンダーからのメール通知にアンテナを張り、メーリングリストなどを活用して情報収集を怠らない仕組みを整えましょう。
適応保守で最も苦労しやすいのが、社内の理解と予算を獲得するプロセスかもしれません。システム自体が壊れているわけではないため、「なぜ今、コストや手間をかけて改修するのか」と疑問を持たれやすい傾向があるためです。
目に見える利益を生むわけではないため投資対効果が見えにくく、後回しにされてしまうケースも少なくありません。
「今対応しておかないと、将来的にシステムが完全に使えなくなるリスクがある」という事実を経営層や現場のユーザーに説明し、納得してもらう姿勢が求められます。
ここまで適応保守の重要性を解説してきましたが、適応保守を繰り返してシステムを延命していても乗り切れない壁が存在するのも事実です。
それが、サーバー機器やOSのメーカーサポート終了(EOSL:End of Service Life)を指します。サポート期間が過ぎてしまったシステムに対しては、通常の適応保守だけでは対応できなくなる理由と、その有効な対策を解説しましょう。
メーカーの保守サポートが終了したシステムを使い続けるのは、企業にとって非常にリスクの高い状態です。万が一サーバーが故障しても、メーカーでの製造が終了しているため交換用の正規部品を調達できなくなります。
修理ができずに長期間のシステムダウンに陥れば、取引先からの信用問題や甚大な経済的損失につながる恐れがあるでしょう。
加えて、新たな脆弱性が発見されてもセキュリティの更新プログラムが提供されなくなるため、サイバー攻撃の標的にされる危険性も急激に高まります。
EOSLを迎えたからといって、すぐに高額な費用をかけて新しいシステムへ移行(リプレース)しなければならないわけではありません。
メーカーに代わって独立した専門企業が保守サポートを提供する、「第三者保守サービス」という心強い選択肢があります。
第三者保守を導入することで、以下のような大きなメリットを得られるのが特徴です。
予算の確保や移行スケジュールの調整に悩む担当者にとって有効な解決手段となるでしょう。
第三者保守サービスを利用する際は、単に費用が安いという理由だけで選ぶのは避けましょう。
自社の環境に合った適切なサポートを確実に受けられるか、慎重に見極める必要があります。例えば、専門エンジニアが直接駆けつけて修理する「オンサイト保守」なのか、故障した機器を郵送して交換する「センドバック保守」なのかといった保守の種別は、重要な確認ポイントです。
また、いざという時に迅速な対応ができるよう「交換パーツの備蓄量が十分か」「対応できるメーカーの種類が豊富か」なども、必ずチェックして依頼先を決定してください。
本記事では、適応保守の基礎知識から他の保守との違い、そしてEOSLに向けた具体的な対策までを解説してきました。
システムを長く安全に使い続けるためには、時代や環境の変化へ柔軟に対応していく姿勢が求められます。しかし、システムの維持管理には多くの課題が伴いますが、正しい知識と選択肢を持っていれば必ず乗り越えられるはずです。
当サイトではEOSLを迎えたIT機器の延命保守や、メーカー保守と同等のサービスを提供するおすすめの第三者保守事業者の比較情報をまとめて紹介しています。
ITコストの削減やシステム運用にお悩みの方は、ぜひ当サイトの情報を参考にしてください。
全国に対応する第三者保守会社の中で、保守の種類が2種類以上あり、パーツのストックが10,000点以上の会社を選定。その中でも「障害時のスピード」「実績」「品質」というポイントで、おすすめの3社ピックアップしました。

引用元:ブレイヴコンピュータ公式HP
https://www.brave-com.jp/

引用元:データライブ公式HP
https://www.datalive.co.jp/

引用元:ネットワンネクスト公式HP
https://www.netone-next.co.jp/service/maintenance/
【選定条件】
2024年2月29日時点、Googleで「第三者保守サービス」と検索して表示された公式HPのうち、第三者保守サービスを行っている25社を調査。「全国対応」「パーツ備蓄量が10,000点以上」「保守の種別が2種類以上」の会社のうち、以下の理由から3社を選定しました。
さらに、以下の理由から3社を選定しました。
ブレイヴコンピュータ:全国の主要都市にある拠点に、顧客の専用保守パーツをストックし、最速オンサイト保守時間を実現
データライブ:第三者保守の対応実績が最も多い
ネットワンネクスト:ハイエンド機器や大型設備機器の第三者保守に加えて、再生品の販売(ECサイト)やレンタルなど網羅的にサービスを提供
※最速2時間の対象:東京23区、平日8時から20時。対象機器:富士通PRIMERGY/ETERNUS